飲み屋でうける半導体の話
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半導体製造装置の故障 

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ママ
ママ
半導体の素か~。なんだか不思議な感じがするわー。でも具体的にどんなことをしてつくられてるのかしらね?ま、今日はもういいわ。帰って寝ましょ

[次の日の昼 ママの家にて]

「ピンポーン」

ママ
ママ
あら、こんな時間に誰かしら?
ミツオ
ミツオ
ミツオです。 ママ、お休みのところごめんね。
ママ
ママ
あら、ミツオちゃん、よく私の家がわかったわね。さてはストーカー?
ミツオ
ミツオ
まさか。以前ママが酔っぱらったときに僕がここまで送ってきたんじゃないか。
ママ
ママ
あら、そんなことあったかしら?ふふっ、まあいいわ。ところで今日はどうしたの?
ミツオ
ミツオ
実は仕事で呼び出されてね、近くにきたから、この前のお礼もかねて挨拶にきたんだ。お邪魔じゃないかな?
ママ
ママ
あら、お休みの日にも仕事?大変ねぇ
ミツオ
ミツオ
まあね。ちょっとしたトラブルだったんだ
ママ
ママ
まあ、どんなトラブルなの?
ミツオ
ミツオ
加工装置がね調子悪くなって

半導体装置とは?

半導体の素ともいえるシリコンウェハー。そもそもはシリコンの塊から切り出されて作られます。なのでインゴットと呼ばれる塊から煎餅のようにうすく切りだすものも加工装置です。

シリコンウェハーの加工装置といっても色々あります。例えば、ウェハーを洗浄するための装置があります。洗浄といっても洗濯機で服をあらったり食洗器で皿をあらったりするように激しく水をふきつけたり、洗剤でウェハーを洗うわけではありません。

何種類かの薬液(過酸化水素水や、フッ酸など)を使用してウェハーについた微小の金属やゴミを取り除きます。

また、酸化膜をつける装置もあります。これは、長さが5m位、高さ2mくらいのものでボートと呼んでいるカーボンや、SICでできたスリットの入ったものにウェハーを50枚くらい立てて装置の中にいれて、炉の中を900℃位まで上昇させてそこに酸素や、他のガスを流して酸化膜をつけます。

その他にも炉の中を1200℃位まで上昇させて気相成長させたシリコンの膜をつけるような装置もあります。この場合の気相成長とは、シリコンを含むガスを高温にして、分解させ、シリコン膜をウェハーの表面に成長させることをいいます。気相とは、ガス状態のことなのでこのような言い方をします。

温度を上げるためにヒーターを使うことが多いのですが、ヒーターといってもランプ加熱方式でに日常でつかう100v位ではできません。400vとか場合によっては500v位の電圧が必要になります。また、誘導加熱方式を使うものもあります。

また、写真の技術をつかった装置もあります。半導体には電気を通すための道を作る必要があるので、それを写真の技術を使ってシリコンウェハーに焼き付ける、ということをする装置もあります。

その他、シリコンウェハーにつけた膜の厚みを測定するための装置、シリコンウェハーをチップ状に細かく裁断し、そのチップをパターン上において接続するための装置、最終的に出来上がったものを検査するための装置などなど、あらゆる場面でその作業に特化した装置が多種多様に用いられます。半導体産業が装置産業といわれるゆえんです。

ママ
ママ
へー、さすがにいろんな技術を使っているのね。写真の発明がなければ、半導体はどうなったのかしらね。
ミツオ
ミツオ
多分、別の技術が使われたんだんだと思う。
ママ
ママ
しかし、いつも半導体のこと聞くと、よくこんなこと思いつくわね~、と感心するわ
ミツオ
ミツオ
そうだね。先人たちの苦労は想像を絶するものだと思うよ

半導体製造の工程

半導体は、あらゆる工程を経て製造されます。なんでもそうですが、始まりは設計からです。どのような半導体を作るか、パターンと呼ばれるものの設計がされます。

次には写真技術を駆使して、最終的に回路を焼き付けるための原本ともいえるフォトマスクというものを作ります。

それから、今お話ししているシリコンウェハーが登場してここからが本格的な製造工程となります。シリコンウェハーを研磨し、表面を酸化させたり、薄い膜をつけたりして製品のスペックに合わせて、様々な加工を施します。

この先はウェハーの検査を経たのち、本格的に半導体として見かけも中身も整えられていきます。

最終的に完成品のあらゆる検査を経て皆さまの使っているスマホやテレビ、自動車の機器に使われていくのです。

ママ
ママ
半導体の製造の工程と言っても、他のこととそんなにには違わないのね。
ミツオ
ミツオ
それはもちろんそうだよ。ただ、どんな分野にも特化した工程や、独特のノウハウはあるけどね。でも製造装置の故障については、他分野のことでも十分参考になると思うんだ。
ママ
ママ
そうなの?でも、特徴はあるんでしょ?
ミツオ
ミツオ
うん、そうだね。半導体製造装置の場合は電力量が高いから低い電圧で起きるトラブルとは多少ちがうかな
ママ
ママ
ふーん、どんなのがあるの?

 半導体製造装置の故障の種類

トラブルと言っても、本当に装置(機械)が動かなくなってしまうものから、一見正常に動いているように見えて、不良品をバンバン作り続けるというトラブルもあります。

先ほど説明したとおり、半導体製造にはあらゆる工程が詰まっています。

ですから、どこかの工程で大量に不良品を作ってしまうと、そのあとの工程で、すぐに発見できないととても多くの不良品をつくりだすことになります。後者の方が困るのはおわかりいただけると思います。

たとえば、ウェハーから半導体を製造する段階になって初めて不良だった、という事がわかることもあります。すでにそれまでに様々な工程を経ていますから、それまでの工程が全て無駄になり大幅な損失になります。

その為にそれぞれの工程で出来上がった製品に対して考えられるだけの検査を行うのですが、それでも完全に不良を把握できないケースがあるので、製造の工程そのものに異常を認められる場合は製品の流動を停止する、といった処置がとられます。

たとえば、装置の状態を示すための計測項目があるとします。一例をあげますと、高温で製造を行う場合、装置を冷やすための冷却水が必要になります。装置の冷却水を18~24℃で管理していた場合、18℃以上で24℃以内であれば問題ないことになります。しかし、昨日まで18℃だった温度が今日は24℃になった場合は「異常」と判断します。

こういった管理方法については半導体の世界だけではなく、様々な業界で使用されています。

半導体製造の装置とは、いうなれば、電気と機械の塊です。電気に関しては先にいった通り高電圧(400v以上、ちなみに日本の家庭用電圧は100Ⅴ)をかけるものが多く、それで熱を生み出します。場合によって、温度は1200℃と超高温になるのでそのまま放置すると大変なことになります。

ですから装置を冷やすことが必要になります。冷やすためには水と空気が使われます。車と同じですね。水をラジエータに流し、そこに装置を冷却し終わった熱風が通るようにし、空気を冷やしてまた装置を冷やす、こんな使い方です。

その空気を動かすのがファンですが、こういった回転体というのは、使い続けると軸がゆがむことがあります。車のタイヤでもそうですが、回転体はバランスをとっておかなければ、あっという間にダメになることもあります。こういったことは機械的な問題ですね。

また、温度が高いと様々なところにひずみができてきます。例えば、元はまっすぐだったところがゆがんできて隙間ができたり、その隙間のせいで冷却効率が下がってしまい必要な部分を溶かしてしまったり・・

さらには、装置の稼働をコントロールするための電子基盤についている金色の線が長時間使い続けると基盤から浮いてきてしまい、断線することもあります。さらに半導体の装置の温度や、他のコントロールに対しても半導体が使用されており、そのほとんどが熱に弱く、熱により故障をしてしまうこともおきます。

室内の温湿度も影響します。半導体の製造工場はクリーンルームといってゴミが極めて少ない環境でかつ温湿度も厳密にコントロールされています。この状態であれば、屋外がいかに暑くても、湿度が高くても問題は起きません。

しかし、高電圧を安定的に使用していくためには、時々メンテナンスを行う必要があります。具体的には、電気を全て落としてしまいます。そのため、クリーンルーム内は外気に近い状態になります。

こうなると、デリケートな装置には困ったことになります。そのまま電源が落ちた状態なら問題ありませんが、仮に湿度の高い状態で電源を入れたりすると、電気がショートを起こしてこわれてしまいます。

装置のトラブルには、枚挙にいとまがありません。いちいち取り上げていくととんでもないことになりますので、私が経験した電気系のトラブルでちょっとおもしろかった事例を紹介します。

電気ってつながってればいい?

電気系のトラブルは完全に故障していて、その故障状態が続いていれば、原因を突き止めて直せば復旧するのでそんなに難しい話ではありません。

しかし、同じ動作をさせるのにその故障状態がいつでもでるわけではなく、時々でてしまう、というのがやっかいです。こういった症状の原因が電気系であれば、ほぼ接触不良が原因といっても過言ではありません。接触不良とは、つながっているのだけれどつながり方が弱い、といったことです。

このつながりの度合いを「抵抗」という指標で把握します。抵抗の単位は「オーム」という単位で「Ω」で表します。テスターと呼ばれる機械で測定が可能です。数値が大きいと「抵抗が高い」といいます。逆に小さいと抵抗が小さいという事になります。

抵抗が大きければ電気は流れにくくなります。厳密いうと他にも色々な条件があるのですが、今はこのように覚えて下さい。

ミツオ君がいうとおり、電圧が高い状態では電圧が低い状態(例えば、家庭電圧は100Ⅴで、低い、とは言えないのかもしれませんが、高いともいえません)電圧が高いという事はエネルギーが高い状態といえます。

エネルギーが高い場合、低い状態ではおきないようなことがおきます。高エネルギーによる高い温度がその周りの機器に影響を及ぼし、場合によってはアルミニウムなどの金属を溶かすことすらあります。

アルミニウムのような金属でさえ影響を受けるのですから、他のものは察して知るべしといえるでしょう。特に様々なコントロールを行うトランジスタのような半導体は熱に弱いケースが圧倒的なので、冷却には細心の注意を払う必要があります。

今回お話するのは、ヒーターで加熱をして半導体の素を作る装置の故障です。具体的にはヒーターとは赤外線ランプです。

1.電気がついたり消えたりする?位相制御とは

半導体を製造する装置の中には温度は最大約1200℃位まで上がる必要があるものがあります。

多数の赤外線ランプを使用し、温度をあげていく場合や、誘導加熱方法などがあります。赤外線ランプは位相制御という方式でコントロールされます。

耳慣れない方もいると思うので位相とは何かについて簡単に説明します。位相とは、波のように周期的な運動するものが、どの位置にいるのかを示しています。波の動きを表すとすると以下のようになります。

これは、円の上を移動していると考えることができ、

上記の大きな円が軌道で小さい円状のものが大きな円の上をまわっていると考えます。小さい円がいる位置のことを位相と呼びます。

位相制御は上記の円の位置をコントロールすることになります。位相制御はサイリスタという半導体を使用して行います。サイリスタとは、ダイオードにスイッチをつけたようなものです。ダイオードについては以前紹介したこちらを見て下さい。最初の半導体は?

サイリスタは上記のようになっています。ダイオードにゲートというのが追加されています。ゲートが先ほどいいましたスイッチのような役目をします。実際にはゲートに電気を流す時間を管理してダイオードに流れる電気(電圧)をコントロールします。

ゲートに信号を送ったときは以下のような状態でONとOFFが繰り返されます。

2.故障の概要

これらを踏まえた上で故障の概要を説明します。ゲートに入れる時間でランプにかかる電気をコントロールするわけですが、時間をコントロールする回路にもし接触不良があったらどうなるか?

そして接触不良がいやらしいのは、いつでも同じ結果をもたらさないということ。ただ、低電圧時は同じ現象を再現する場合が多いので、原因を特定しやすいのですが、高電圧の場合は電気を流そうとする力が強いのでちょっとした接触不良であれば問題なく動いてしまいます。

しかし、それを放置し続けると段々抵抗が大きくなり、影響がでてしまうレベルにまで到達してしまうのです。それが低電圧の時のように現象がすぐにでてくれれば、いいのですが、以前はおかしかったのに今度は大丈夫だった。などということが起きます。

装置にはインターロックといって異常を検知すると、装置を停止させる機能があります。しかし、この機能は万能ではなく、危険な状態が考えられるケースには極めて優秀に対応しますが、ちょっとしたことには対応できない、といったことがあります。

この場合、温度をコントロールしようとしているわけですから、低ければ時間が長くなり、逆だと短くなります。ところが接触不良があるとうまく温度が上がってきません。つながったと思ったら切れるまたはその逆が大きなスパンで繰り返されることになります。

ですから、突然ランプが点灯したり、完全に消えてしまったりといった症状がでてしまい、結果として温度のコントロールができなくなり、不良品を作ってしまう事になります。そしてこの症状はとても短い時間間隔でおきるため、前述したインターロックでは装置停止することなく、装置は動き続けてしまい、最悪の場合そのままお客様のもとに出荷されてしまう、という最悪の事態を招く可能性があるのです。

ママ
ママ
面白いわね。ミツオちゃん、ためになる話ありがとう
ミツオ
ミツオ
ママってやっぱりすごいよね。すぐに理解できちゃうなんて
ママ
ママ
ふふっ、私ってやっぱり謎多き女、かしら?
ミツオ
ミツオ
うん。ミチコも言ってたよ。ママに言われるとなんとなく納得させられちゃう、って
ママ
ママ
それはよかったわ。二人とも仲良くね

人もまた同じ

ダイオードのお話をした時に、自分のことしか見ない、と紹介しました。それよりもまた一歩進んだ今回のサイリスタの場合は心がその方向に動くかどうかをコントロールする力が働きます。

そのコントロールがうまくいっているうちは問題は起きません。しかしそこに何がおかしなことや、心配なことがあると人はたちまち故障したサイリスタのようについたり消えたりすのるのではないでしょうか。

人はどんな刺激でも慣れてしまう動物です。厳しい刺激でも浴び続けていればいつか当たり前になって、「これでいいんだ」と思いがちです。それは必要なことなのかもしれませんが、心が麻痺している可能性もあるのです。

結論は実にあたりまえの話になってしまいました。しかし、時には自分の心と行動が正しくコントロールできているか、見直す機会が必要ではないしょうか。

それは、きっと他の人の助言であったり、本を読んでなにかを感じたりすることのように思います。

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    半導体材料のメーカーで長年仕事をしてきました。材料メーカーなので半導体について多くの詳細を知っているわけではありませんがその分七面倒くさい言い方ではなくわかりやすく伝えられると考えています。 もし、お時間と興味があれば、読んでみて下さい。

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