目次
1.集積回路のイロハ
1.集積とはそもそもどんな意味なのか
そもそも集積とはどんな意味でしょうか?集積とは、広辞苑によると
貨財や物が集まり積もること。集め積むこと
引用:広辞苑 第五版 岩波書店
とあります。漢字の意味がそのままですね。英語ではIntegrated circuit(組み込まれた回路)略してICと呼ばれています。英語のIntegratedには、統合する、という意味があります。
日本語と英語で若干のニュアンスの違いがありますが、日本語の場合は色々なものを集めてできたものといったイメージ、英語の場合は複数のものが集まりあって全体を作りあげるといったイメージになります。
集積回路の働きは英語でいうICの方が個人的には近いと思います。
2.回路とは?
回路も広辞苑で確認してみましょう
電流の通路。電流が流れるために、導体を終端のないように接続したもの。
引用:広辞苑 第五版 岩波書店
です。電流とは電子の流れ、導体とは電気を通すもの、終端とは端のことと考えてください。終端がないというのは端がないことなので、輪のようになっている状態ですね。
まとめると、集積回路とは色々な半導体が集まった電流が流れる輪の構造をもったもの、ということになります。わかりやすく言うと、半導体が集まって様々なことができるもの、と考えればいいでしょう。
3.集積回路はなぜ生まれたのか?
半導体が世に出てくる前には、真空管という今のトランジスタと同じような働きができるものがありました。でも真空管はとても大きかったのです。代表的なもので、高さ約12cm、直径約4cm位ありました。(参考:最初の半導体とそれ以前の話)
ダイオードやトランジスタが発明され、色々なものが小さく作ることができるようになりました。しかし、この時はまだ、トランジスタや抵抗などを個別につないでいました。それでは効率が悪く、コストもかかり、故障もしやすいため何か方法がないか、と開発されたのです。
そして、直接開発しなければならなくなった理由は・・軍需なのです。
4.いつ誰によって開発された?
トランジスタの発明が1948年頃のことです。以前紹介しましたショックレーたちが開発しました。では、集積回路はいつ頃かというとなんとその約10年後の1959年頃のことです。早いですね。
トランジスタはベル研究所というところで開発されました。電話の声の増幅やつなぎ先の切り替えをスムースに行うためです。そしてダイオードの開発は、レーダーの精度の向上のためでした。
集積回路の開発には、軍需がからんでいます。1958年前後といえば、米ソ間で核やミサイル、宇宙開発などがしのぎを削っていた時期です。特にミサイル軽量化の問題がありました。つまりより遠くへ飛ばすために少しでも軽くしたい、というのがそもそものスタートだったのです。
やがて一人の天才が問題の解決方法をみつけます。アメリカ テキサス・インスツルメンツのキルビーは当時半導体の結晶を作っていたゲルマニウムに他の抵抗やコンデンサも入れてしまえ、と考えたそうです。
やや遅れて、フェアチャイルド社のノイスが今の集積回路製造に重要なプレーナ技術を考案し、今に至ります。プレーナとは、「平坦」という意味です。この名称がついた理由には、半導体製造の歴史が関わってきますので、別の機会に紹介します。
プレーナ技術は、今の半導体製造に大きな役割を果たしています。
参考・出典:IC(集積回路)とは?
2.集積回路に含まれるもの
集積回路は様々なものが集まって出来上がることがわかりました。では一体どんなものが集積回路には含まれているのでしょうか。もちろん全ての集積回路に以下全部が含まれているわけではありませんが代表的なものを紹介しています。
また、下記のものは電気の回路を作るうえで使われることが多いものです。
1.ダイオード
最初の半導体であるダイオードが、集積回路に使われています。正確にいうとダイオードと同じ働きをする部分がある、という感じです。
2.トランジスタ
もちろんトランジスタも入っています。というか、トランジスタの組み合わせにより集積回路ができているといってもいいかもしれません。
3.抵抗
電気などに興味がない人には、馴染みがないかもしれませんが、抵抗とは電気を流しにくくするためのものです。では、せっかくの電気の流れを妨げる必要があるのでしょう。水の流れを考えてみてください。
水は、水門がないと好き勝手に流れていってしまって、例えばダムなんかでも使う水量がコントロールできなくなりますよね。それと同じです。決まった電流を必要なところに送り込むため抵抗はどうしても必要なのです。
ですから、回路を作るためにはどうしても抵抗が必要になります。
4.コンデンサ
また、聞きおぼえのない言葉がでてきたかもしれません。コンデンサは簡単にいうと電気をため込むものです。コンデンサは、直流(電池のような電源で、+と-の方向が一定なもの)は、構造上、通しません。しかし、交流(家庭用の電気。+と-が入れ替わる)は通すという特徴があります。
また、英語では「キャパシタ」といいます。英語でもコンデンサという言葉が使われることがありますが、一般的に電気回路で、日本でコンデンサとよんでいるものと同じ働きをするものはキャパシタです。
電気回路での役割は大体以下のようになります。
電気をためたり、出したりする
先ほど紹介したように、コンデンサは電気をためます。ためた電気は、そのためられる限界までたまると、飽和したようになり電気の動きが止まります。でも必要があれば、その電気を使うことができます。
例えば、つないでいた電源を外して、電球をつなぐと電源がないのに、電球を点灯させることができます。
電圧を一定にする
ダイオードのお話をした時に、交流を直流にするお話ししました。 その時、整流作用を紹介しました。(参考:最初の半導体とそれ以前の話)
ダイオードは片側にしか電気を通しません。ダイオードにコンデンサをつなぐことにより、ダイオードが電気を流していないときには、電気をためたコンデンサから電気を流す、というわけです。
3.まとめ
つまり集積回路とは?
ここまで読んでいただいた方であれば、集積回路は半導体ではないことがおわかりいただけたと思います。集積回路は、半導体を含む回路のことです。
つまり様々なものが集まって、それぞれの力を生かし輪になって目的に向かっている、ともいえます。人間社会に例えると会社のようなものです。
一人ひとりの力は目立っていなくても、集まると大きな力を発揮します。例えば製造会社が何かものを作っていることを想像してください。Aさんは設計を担当し、Bさんは製造を担当します。
でももしAさんが設計と製造両方を行っていたとしたら、どうでしょう。とても効率が悪いですよね。役割分担を行うことにより、効率があがります。同じ時間を使って物を作った場合にはより短い時間でできるようになるでしょう。
半導体の世界は人間社会と同じ?
半導体がつながりを持つためには、半導体の間に電気が通らなければなりません。会社で考えるとどうでしょう。何度か紹介してきましたように、電気は電子の流れで、電子とは人の心のようなものではないかといってきました。
会社の中でも心が通じ合わないと会社自体が役割をはたすことはできなくなってしまうのです。やっぱり、半導体の世界と人間の世界って似ていますね。
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