だわ
ガス排気配管の生成物
シリコンウェハー上に薄膜のシリコンを気相成長させるときに使用するガスは、H2、シラン系のガス、ドーパント系のガスです。(参照:半導体製造には危険がいっぱい)
それぞれ危険なガスですが、シリコン薄膜を成長させるときにすべて供給したガスはすべて使われるわけではありません。逆にほとんどが垂れ流されています。
それらはシリコンウェハー上で反応後、除害装置で無毒化されたあと、大気に放出されます。しかし、その途中で、特にシリコンを反応させた近傍でより多くの副生成物ともいうべきものが発生します。
ここでできる生成物は使用しているすべてのガスの成分を含んだとても複雑なものです。バッチ式であれば、一度のプロセスが終了したあと、シリコンウェハーを取り出すために排気反感も空気にさらされます。
これに対し枚葉式の場合、メンテナンスの機会を除けば、酸素にふれることはありません。(参照:半導体製造における事故)
ですから、バッチ式でできた副生成物と枚葉式でできた生成物には違いがあります。共通しているのは、どちらも大変危険だ、ということです。ただ、比較すると枚葉式でできる副生成物の方がより危険です。
バッチ式の場合
バッチ式の場合、先ほど説明した通り、ウェハーの装填のたびに空気に触れます。つまり酸素と副生成物とが反応を起こします。そこでできたものは下図のようにシリコン成長したときにできたものの上に酸素と反応したものが蓄積されます。これを繰り返していきます。
酸素と反応した部分の主な組成はSIO2、シリコン薄膜生成中にできた部分はCL-SI-H2ような組成になっていると思われます。
ここでできた副生成物の外観はやや硬く、色は白っぽいけれど黄色のようになることもあります。物理的な刺激(衝撃のようなもの)を与えると着火します。
ある時、細長い配管を肩に抱えていたら、誤って壁にぶつけたらしいのですが、配管の両端から火炎放射器のように火が噴き出てきた、ということがあったそうです。
また、副生成物の正体がはっきりとわかっていなかったころ、配管の中に腕を入れて、腕を引き出し時に腕と一緒に火がでてきた、なんてこともありました。
たたいたり、こすったりすると発火する、そんな性質があります。また、反応時にはH2のほか、鼻をつく刺激臭がでてくることから、塩化水素が発生しています。
しかし、バッチ式でできる副生成物は、次に紹介する枚葉式に比べるとまだ安全と言えるかもしれません。
枚葉式の場合
枚葉式は、ロードロックに装填したシリコンウェハーをプロセスチャンバーに搬送するので、ロードロックは何度も空気にさらされますが、その都度不活性ガスに置換していくのでプロセスチャンバーが空気にさらされることはありません。(参照:半導体製造における事故)
ですから、プロセスチャンバーおよび排気配管側には次々とシリコン膜が生成されていくことになります。そして途中に酸化したものが入らないためなのか、または別の理由からなのか、配管メンテナンス時解放してしまうとわずかな時間(数秒~十数秒くらい)で自然に発火します。
CLとは塩素、SIはシリコン、Hは水素です。細かくいうとおそらくもっと様々な種類の元素が混ざっているのでしょうが、ほおっておくとすぐに着火(酸化)するため、はっきりとした化学式はわかっていないようです。反応の状態から上記のようになっているのでは、と想像されています。
先ほどのバッチ式の場合と違い、副生成物の層の間にSIO2が入っていません。
バッチ式の場合はSIO2が途中に入ります。化学式だけ見ると、SIO2は石英がそうです。つまり分子として安定した状態です。安定した状態とは、なにかと反応したがらないことです。
ここからはあくまで私見ですが、SIO2が途中に入り込むことによってバッファのような役目をはたしているから反応が遅れてくるのか、と考えています。
しかし、枚葉式の場合は不安定な状態(何かと結合したがっている状態)なので、空気に触れたとたん、空気中にある水分や酸素と反応してH2やHCLを放出するのではないか、と考えられます。
副生成物の処理
さてそんな危険な副生成物ですが、どうやって安全に処理するのでしょうか。配管をその都度燃やして処理する?もちろんそんなことはしません。
ちなみに排気配管は金属でできています。酸化に弱い鉄などではなくステンレス鋼です。
かつてはSUS304というタイプを使用していたこともありましたが、これではとても使用するガスや薬液に耐えられないので、近年はSUS316、あるいは、SUS316Lというものを使用することが多いようです。
副生成物を溶かす、あるいは安全な場所で反応を促進させて配管内をもとの状態に戻します。この時にも危険な薬液を使います。
使用する薬液はフッ酸と硝酸を合わせたフッ硝酸というものを使用します。これをかなり薄めた水槽の中に配管を入れて溶けるのを時間をかけて待ちます。フッ酸と硝酸に関しては半導体製造には危険がいっぱいを参照ください。
その他に酸性フッ化アンモニウムという粉上のものを水に溶かして使用することもあります。その場合副生成物の反応はすさまじく、天ぷらを揚げているように「パチパチ」と音を出しながら、炎があがることがあります。
ママはカウンターを出て、セミオ君の前に立つとセミオ君の頭を抱えて抱きしめてあげました。
ママはそう言いながら、カウンターの向こうに戻ってしまいました。
まとめ
セミオ君の落ち込んでいた原因がわかったところで、ママはいつものママに戻ったようです。
人生に例えるときれいなことばかりで生きていける人はいないと思います。みんな何かしら汚いものを背負っています。犯罪とかはっきりとした悪いことはやってなくても小さな嘘はついたことがあるはず。
排気配管はその汚れたものの出口で、中につまっている副生成物は嘘をついたことやあの時ああすればよかったと思う後悔なのかもしれません。
だから、排気配管を綺麗にするということは罪や罪の意識を洗い流す、ということにつながるような気がします。
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