半導体製造にはまだまだ危険なことがあると聞いたママ。確かに使うガスが危ないことは以前説明してもらった(参照:半導体製造には危険がいっぱい)のでわかっているつもりですが、それだけではないんだ、ということをセミオ君から聞いて少し複雑な心境です。
ママは腕組みをして考えています。
難しい顔をしていたママでしたが、
ママは何事もなかったように仕事を開始しました。
排気ガス処理装置
「カランコロン」
さて、前回のお話で装置回りの排気ガスの処理のお話をしましたが、まだ、最終処理には至っていません。
ミツオ君がいう、スクラバーとはいったい何なのか。
スクラバーとは英語で書くと(scrubber)なのでscrubする人です。scrubは「ごしごし洗う」とか「磨く」といった意味なので磨く人、ということです。
半導体業界や化学薬品業界ではスクラバーというと、有害なガスなどを水や薬品で中和して、大気に無害にして放出する装置のことです。
それでは排ガス処理にはどんなものが使われてるのでしょう。小さな規模であれば、スクラバー付きドラフトチャンバー(局所排気装置)を使用することが多いようですが、工場のような大所帯になると多くのガスが発生するため、大きなファンを使用して一カ所に集めて大量に処理するケースが多いようです。
スクラバーにはその処理の仕方によって、乾式と湿式があります。乾式は活性炭のような吸着材を使用してガスから危険なものを取り除く方法です。一般には有機溶剤のように水に不溶なガスの場合に使われます。
これに対し、湿式はガスと洗浄液を接触させてガス内の毒性を除去して大気に放出します。先ほどの乾式と違って水溶性のガスに対して使用されます。
また、酸とアルカリの両方のガスが発生するので、それぞれに対応したスクラバーが必要になります。今回、お話するのは、酸に対応するスクラバーで、かつ湿式のものです。
副生成物対応のスクラバー
前回お話した通り、副生成物は衝撃を与えたり、不用意に空気中にそのままさらすと自然に発火するというものです。副生成物対応のスクラバーは湿式です。
副生成物は酸です。ですからかつてスクラバーにアルカリ(苛性ソーダ)を加えて無害化していたこともありました。その後は、大量の水で処理する方法が主流となりました。
水を加えると反応が進み、表面にはSIO2の膜ができて、とりあえず自然発火は防げます。ただし、膨張するのでその処理が難しくなります。スクラバーの通常時のトラブルのほとんどは排気口の詰まりです。
副生成物が膨張して排気されてきたガスの出口をふさいでしまうのです。
ファンにひかれた排ガス処理装置に入ってきたガスは最初に水のシャワーを浴びます。しかしどうしても、水槽の入り口付近に副生成物ができることがあります。
これを半ば力ずくで清掃するのですが、その時に爆発的燃焼を起こすことがあります。大きな音とともに火柱があがることもあります。かなり慎重に行う必要があります。
常に水で濡れている状態であれば、比較的安全ですが、表面が乾いた状態であれば、(水槽内でも乾いた状態になる)最初に水をかけたときの刺激でも発火します。屋外に設置していますが、周りにはどうしても水素の雰囲気がありますので場合によっては大事故になる可能性もあるのです。
私自身、かなりの回数作業をしましたが、毎回ドキドキしながらやっていました。
ただし、炉で反応したあとの副生成物と反応せずにただ流しただけ(温度があがっていない)の副生成物には違いがありました。高温の中を通ってきていないガスは、高温の中で反応後のガスと比べると比較的安全でした。
あくまで私見ですが、危険なものは一度熱分解されてしまったもの、比較的安全なのは分解されずにそのまま排出されたものだろうということです。この二つは化学的に性質が違うだろうということは想像がつきます。
まとめ
半導体を人にたとえた場合、今回の件はどう考えればいいでしょうか。半導体を製造していく過程では、今まで紹介してきた通り、危険なものが多く使われ、またそれで新たにできてしまうものにも危険が伴います。
半導体はクリーンルームというほとんどゴミがない部屋で作られます。作業する人は全身をクリーンスーツというものに身をつつみ、ボールペンの一本に至るまでゴミや金属に気を使います。
しかし、一歩その外側に出ると、危険なだけでなく、非常に汚いものや、環境を汚染しかねないものが存在することも事実です。
人も生きていくために汚水を飲まざる負えないときがあると思います。表面では綺麗なことを言ったり、行ったりしていても、裏に回ると恥ずかしいことや汚いことをしていることがほとんどではないでしょうか。
やはり半導体とはどこか人に似ているような気がします。
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