ママはセミオ君の「まだ危険なことはあるよ」という話は気になりましたが、大きな塊になったシリコンがウェハーという薄い円盤のようになる、ということにも興味があります。
ママは、以前少し聞いたような気がしたのですが、その時はただ、削っていく、という話だったはず、と考えています。でも経験的に硬いものを削ると端にギザギザができたり、割れたりするような気がするのです。それをどうやって回避しているのか、興味がありました。
いつもの二人の様子を聞いていると、この件についてはセミオ君よりミツオ君の方が詳しそうな気がします。セミオ君は電気と機械には強そうだけど、物を作るときは作るときの設定もあるだろうし、そっちはミツオ君の方が何となく知っているような気がしたのです。
ママがクラスをカウンターでグラスを拭いていると、
「カラン、コロン」
と誰かが入ってきました。
その時「カラン、コロン」
とまた誰か来たようです。
ママの心の中 (仕方ないわね。セミオちゃんで我慢するか・・)
シリコンウェハーができるまで
シリコンウェハーができるまでを以前簡単にですが、紹介しました。(参照:半導体の素)
あのお話をもう少し詳しく紹介したいと思います。
以前紹介したシリコンのインゴットのお話がありましたが、(参照:シリコンへの道)それをスライスしてシリコンウェハーを作っていきます。
スライスウェハー(SW)
スライスする前に外側を削って単結晶の向きを表すためにノッチとかオリフラ(オリエーテンションフラット)と呼ばれる印をつけます。その後、厚さを0.6mm~0.9mm程度に円盤状の輪切りにしていきます。
ここでできたシリコン単結晶の円盤をスライスドウェハーと呼んでいます。一般に略してSWといいます。シリコンインゴットはとても固いのでIDブレードという刃先にダイヤモンドの粉末付きの刃を使います。IDとはInner DIameterの略で日本語にすると内周のことです。
具体的には、厚さ0.2㎜位のステンレスの円盤の中心をくりぬいて円盤状にして、その内周にダイヤをちりばめています。それを高速回転させてシリコンインゴットをスライス状にカットしていきます。
面取り(べべリング)
このようにできたシリコンウェハーはどうしても外周があれていたり、直径が違っていたりします。そこで面取りを行います。
ホイールと呼ばれる研磨機を使用して面取りを行います。ホイールとは車輪という意味で回転させながらウェハーの外周を面取りしていくと同時にウェハー外側の加工でできたゆがみを除去します。
ラッピングウェハー(LW)
面取りが終わると次はラッピングという作業を行います。ラッピングの目的は不揃いである厚さを合わせたり、歪んだ面を修正することです。
ラッピングとはLappingのことで、Lapの現在分詞です。ラッピングとは金属加工において、ラップと呼ばれている水平の台の上に圧力をかけながらこする合わせていき、表面の平面度を上げていくことです。
シリコンウェハーの場合のラッピングは上下にラップ盤というものを配置して、下図のようにラッピングパウダーと呼ばれる粉と水を混合させてラップ盤を回転させ、粗研磨します。上下で挟み込むことにより、両面を一度に研磨できます。
ここで、キャリアとはウェハーをを中に入れるもので上下ラップ層に挟まれています。ウェハーはキャリアとともに自転・公転します。また、上下ラップ盤は逆方向に回転します。
上下のラップ間にラッピングパウダーと水の混合液を入れて研磨します。ここでできたシリコンウェハーをラップドウェハーと呼び、略してLWといいます。
まとめ
もともとは岩のようなものだったのが、似ても似つかない姿になりました。ここまでの作業でかなりいい感じのシリコンウェハーになります。しかし、人間でいうとまだ小学生くらいですね。シリコンウェハーは半導体になるためにさらに研鑽をつみます。
この先はエッチングという化学的な処理や、研磨という工程に進み、鏡のような表面に加工されていきます。そうしてやっとほぼ一人前というわけですね。
(ママはそれを無視するかのように)
さてミツオ君はなんの話だったのでしょう?それはまた次回に
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[…] さて上の図で最初の青の上下に赤い状態のものが乗っていますが、これが、スライスやラップといった工程で傷んでいる部分です。見た目には問題なさそうなスライスウェハーでも表層部では不具合がでており、これでは半導体を作ることができません。(参照:シリコンウェハーの作り方1 切削) […]