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半導体 ウェハー洗浄2

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ミツオ君が彼女とうまくいかなかった理由を聞いてママは’洗浄’という言葉に思いあたったようです。しかし、その根拠がよくわからないミツオ君とセミオ君。とりあえずウェハー洗浄のことを話続けます。

今回はその基本的な手法について紹介していきます。

洗浄の基本的な工程

前回のお話でウェハー洗浄の工程は、各メーカーによって違うということを紹介しました。しかし、だからといって全くのゼロからスタートするわけではなく、ある程度決まったシーケンスはあります。

シリコンウェハーに関わる汚染やゴミの性質、そして各工程で使用される薬液、ガスの種類がはっきりしているので、汚染の性質や不純物も予想可能です。また、最近では各工程ごとに、金属汚染レベルをチェックしているメーカーもあるので、どんな物質に汚染されているのか、を判定できるのでそれに対応したウェハー洗浄が可能なのです。

そこで、元になっているといっても過言ではない、ウェハー洗浄のバイブルともいえる方法を紹介します。

RCA洗浄とは

RCA洗浄とは1970年代に開発されたものが基本となって長い間使われているいわば伝統的な手法です。開発したのは、アメリカのエレクトロニクスメーカーRCA社で、それでこの名称がつきました。

このように長いときを経ているのにも関わらず、RCA洗浄は今でも輝きを失っていません。これは日進月歩の半導体の世界において非常にまれなケースなのです。

SC1洗浄

RCA洗浄はおおよそ三つのプロセスで構成されています。最初はSC1洗浄(standarad clean 1)といいます。

SC1洗浄はまずアンモニア+過酸化水素水+純水のいわゆる混酸で、目的はウェハー表面の有機物およびパーティクルの除去が目的です。

アンモニア(29%NH3)、過酸化水素水(30%)、純水の三つの混合液ですが、1:1:5の割合で行われ、加熱して使用することが一般的です。

この場合の溶液のphは10.5前後になります。(もちろん、比率を変更して行うことはよくありますが、一般的はこの程度になります。)

ウェハーの表面にはファンデルワールス力という力で粒子がついています。これは分子間力とも言います。

少し話がそれますが、結合の種類には結合する種類には共有結合、イオン結合、金属結合があります。それに加えて、水素結合、ファンデルワールス力があります。そしてこれらのななかで最も結合力が弱いのが、ファンデルワールス力です。

ファンデルワールス力は極性分子間に働く静電気的な力や、分子同士で働く引力なども含まれます。この力でシリコンウェハーの表面に有機物やパーティクルといったものがついています。

このようにして付いてしまったパーティクルなどをまずは除去していきます。

SC1の洗浄メカニズム

まず過酸化水素水でシリコンウェハーの表面を酸化させます。そして次の段階でアンモニアがシリコン酸化膜を溶かしていきます。これを繰り返していき、ウェハー表面がエッチングされていきます。

エッチングは、パーティクルや粒子といった汚れが接している部分にも及びます。それによってそれらははがれていきます。

はがれたパーティクルなどは、再度シリコンウェハーについてしまいそうですが、SC1洗浄液のph=10.5付近であり、このphであればシリコンウェハーの表面電位が負に傾くので、静電反発にてパーティクルの再付着が防ぐことができるのです。(粒子などの表面も負の電荷をもっているので)

ここで一度純水でリンスします。

SC2洗浄

RCA洗浄の次はSC2(standarad clean 2)です。以下が主なシーケンスです。

SC2工程での目的は金属汚染の除去です。塩酸(約37%)、過酸化水素水(30%)、純水の混酸を加熱して使用します。各薬液の比率は1:1:6です。phは大体0~0.2程度になります。

シリコンウェハーをSC2薬液につけると、ウェハー表面についていた鉄やニッケルなどの金属イオンが溶解して薬液中に入り込みます。酸性溶液中では金属のイオンが安定状態で存在するので、再析出の心配はありません。

一定時間浸潤させたら、純水でリンスします。

次にパーティクル除去時に形成された薄い酸化膜(化学酸化膜といいます)とそれに含まれている汚染物をきわめて薄いフッ酸あるいはBHFに浸潤させて除去します。

再度純水にてリンスします。

最後は乾燥させますが、洗浄工程で最も神経をつかうところかもしれません。

乾燥するときにはスピンドライとういう回転させながらウェハーを乾燥させる方式を使うことが多かったのですが、ウォーターマークと呼ばれる円形状の水滴のような跡が残ってしまいます。

この水滴には濃縮されたパーティクルが含まれており、デバイスに大きな悪影響を及ぼすことがわかっています。

そこで最近ではIPA(イソプロピルアルコール)を使って蒸気乾燥させたり、IPAと純水の界面を通してウェハーに対し垂直に薬液を引き下げる方法などが採用されています。

ウォーターマークはスピン乾燥→IPAによる蒸気乾燥→IPA直接置換乾燥法の順で改善されてきました。ですがおそらくこれが最終改善ではないでしょう。他の工程と同じく今後のさらなる改善が期待されるところです。

ミツオ
ミツオ
まさか、ママ、洗浄工程はメーカーによって違うから、ボクがミチコに対してマニュアル通りのことしてたとか、言うんじゃないよね?

ミツオ君はいつになくつっかります。でもママはそ知らぬふりで軽くかわします。

ママ
ママ
あら、ミツオちゃん、ひょっとして心あたりでもあるのかしら?
ミツオ
ミツオ
あ、あるわけないよ、そんなの
ママ
ママ
ふふ、ミツオちゃんはいいお客さんだから特別に教えてあげるわ、ウェハーの洗浄と女心の共通点を、ね

それまで二人の会話を聞いていたセミオ君が突然声を出しました。

セミオ
セミオ
えーっ何々?ボクも知りたい!
ママ
ママ
そうね。セミオちゃんも聞いておいた方がいいかも

意味ありげな笑みを浮かべるママ。続けて

ママ
ママ
私、今聞いていて思ったんだけど、あなたたちはウェハー洗浄の工程ってよく知ってるの?
ミツオ
ミツオ
い。いや、特別しらないかな。聞きかじった程度で・・・
ママ
ママ
やっぱり、ね。実はね、こないだ、ミチコちゃんここに来たのよ
ミツオ
ミツオ
えっ
ママ
ママ
ミチコちゃん、泣いてたわ。私そんな男とは別れなさい、って言ったのよ

衝撃の展開です。続きは次回で。

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    半導体材料のメーカーで長年仕事をしてきました。材料メーカーなので半導体について多くの詳細を知っているわけではありませんがその分七面倒くさい言い方ではなくわかりやすく伝えられると考えています。 もし、お時間と興味があれば、読んでみて下さい。

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