先日のママとのデートのあともセミオ君は浮かない顔です。
無事仕事を終えて、今日もクラブセミコンにセミオ君は向かいます。
「カラン、コロン」
いつも通りを意識して、セミオ君は元気のある声を出しています。
ままは何となく不機嫌そうです。
セミオ君はママの返事も待たずに話始めました。
前回のエピタキシャルの品質の際に「パータン」の品質問題を取り上げました。今回は「パターン」を作る工程について紹介していきます。以前に紹介した内容も一部含まれますが、復習だと思ってお付き合いください。(参照:半導体 ウェハーの作り方3.1 熱拡散、半導体 ウェハーの作り方3-2 イオン注入)
半導体製造におけるパターンとは、「回路のパターン」です。事前に最終製品に必要な設計がされたものをウェハー上に実現する方法がこれから紹介する工程です。
パターンの形成
下図はパターン形成工程を模式的に表したものです。
酸化膜
まず、シリコンウェハーに酸化膜を付けます。シリコンの単結晶の表面に酸化膜を形成するには、酸素の雰囲気にしたり、水の雰囲気にして高温でアニールする方法が用いられます。
アニールとは簡単にいうと熱で処理することをいいます。半導体業界以外でも使われることが多いので、ご存知の方も多いかもしれません。日本語では焼きなましといいます。
酸化膜としては厚みを0.3~1μm程度としています。
不純物(ドーパントのことです)を拡散する際には、溶け込む量や拡散速度が違うので、酸化シリコンとシリコン中の拡散係数の違いを利用します。
不純物の拡散係数は、酸化シリコン中では、シリコンのよりも1.5桁以上小さいため、酸化膜を形成した領域には不純物がシリコン内には入らないのです。
この工程における注意事項としては、炉の清浄度の管理はもちろんですが、石英部材、ガス供給配管、など総合的な管理が必要となります。また、汚染などを顧慮しつつ、各プロセスにおける酸素析出量などを考慮したウェハー酸化の工程を設計する必要があります。
フォトリソグラフイ
図でいうと、「レジスト」とか、「スピンコーティング」とある部分がフォトリソグラフィ工程です。
ウェハー表面に焼き付けるパターンがついたものをマスクと呼びます。マスクを通して光を当てると光が当たる部分とあたらない部分ができます。これらはのちで現像処理されますが、光が当たった部分が溶けて取り去られてしまう方をポジ型、その逆をネガ型と呼んでいます。
こうしてできたウェハーはパターン付きのウェハーとよぶことがあります。いくつかの特徴的な工程がありますのでそれぞれ紹介していきます。
レジストコーティング
一般にスピンコートという方法が用いられます。レジストをウェハーに滴下し、数千回転/分のスピードで回転させて塗布する方法です。レジストの厚みそのものは大まかにその回転数とレジスト粘度、遠心力のつり合いで決まります。
プリべーク
フォトレジストは感光材樹脂を溶剤(有機溶剤)で希釈したものですから、ベークと呼ばれる温める動作を加えることにより、溶剤を蒸発させ感度を上げていきます。密着露光の場合には、溶剤を蒸発させると、表面を安定化させることができます。
露光
光を当てることです。光源には紫外線を使用します。波長が短い方が解像度を上げることができるからで、最近の高集積デバイスでは遠紫外線やエキシマレーザーといった短波長化が進んでいます。
現像
スプレー式、およびパドル式の現像機があります。ネガ型ではレジスト溶剤、ポジ型では、アルカリ溶剤を使用します。
リンス
ネガ型については有機溶剤が、ポジ型には純水が使用されます。
ポストベーク
目的は次の工程であるエッチング時のウェハーとレジストとの密着性を上げるために行われます。
また、注意事項として、この工程では有機溶剤をしようするので、その扱いには十分注意する必要があります。
エッチング
ここでいうエッチングとは、酸化膜のエッチングのことを指します。(以前紹介したエピタキシャル工程でも、エッチングがあります)エッチングとは一言でいうと削ることです。
エッチングにはウェット(薬液)とドライ(ガスを使用)の二つの方法があります。
ウェットエッチング
バッファドフッ酸(BHF)とういう薬液を通常使用します。バッファドとは、「衝撃を和らげる」という意味です。フッ酸はかなり強烈な薬液なので、他の薬品を混ぜて少しエッチングの度合いを和らげるようにしています。混ぜる薬液はNH4Fというものを使います。通常、フッ化アンモニウムといいます。(参照:半導体製造には危険がいっぱい)
ちなみにフッ酸(HF)の水溶液内では以下のように平衡状態が保たれています。
HF→H++F- HF+F-→HF2-
SIO2(シリコン酸化膜)のエッチングにはHF2-の寄与が大きいといわれており、BHFの役割はF-の欠乏を防ぎ、安定したエッチング特性を保持することや、レジストの膨潤やレジスト/SIO2界面の浸透を抑えより良い形状を実現することです。
ドライエッチング
エッチングガスとしては、CF4およびCHF3(参照:半導体製造には危険がいっぱい)を用い、キャリガスとしてはアルゴンを使用します。これらのガスで充填したチャンバ内にウェハーを入れておき、高周波プラズマを発生させてエッチングを行います。
レジスト膜の除去
酸化膜エッチングに使用したレジスト膜はエッチングのあと取り除きます。ウェット工程としては硫酸(H2SO4)と過酸化水素水(H2O2)の混合液を使用します。
ドライ工程としては、酸素を導入し、高周波プラズマ中でレジストを灰化させるアッシング工程があります。アッシング工程のあとは上気のウェット工程で除去します。
灰化とは空気中で加熱することにより、有機物を取り除くことをいいます。
ここまでの工程で、パターンがウェハー上に形成されます。ここで問題があったり、このあとエピタキシャル工程がある場合などに品質問題が起きると、設計通りに電気が流れなかったり、最終製品としての寿命が短かったりする、などの不具合が起きてきます。
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