はてさて、ミツオ君の彼女の説得?を引き受けたママですが、どうやって説得するのでしょうね?
確かに何事も大きければいいわけではないでしょう。でも昔から「大は小を兼ねる」なんていわれてますから、ママはちょっと大変かもしれません・・・。
「カランコロン」
大きいか小さいか、それが問題だ!
実は半導体の進化は小ささへの挑戦でもあったわけです。例えば、ひと昔前の携帯電話は今のものよりも大きいけれど、機能はくらべものにならないくらい少ないです。もっというと写真やビデオをとる機能などはありませんでした。
電話としての機能、さらにはコンピュータのような機能を併せ持つ今皆さんが使っているスマートフォンはまさにオールインワンです。つまり様々な機能を果たすために使われる面積がどんどん小さくなってきたのですね。
この一事を考えてみれは、小さいことはいいこと、なのです。そして半導体の世界では、ムーアの法則というのがあって「半導体の集積率は18カ月で2倍になる」というのがあります。これは、18カ月で集積回路内のトランジスタの数が同じ面積で2倍になる、ということです。
半導体の素、シリコンウェハー
以前に紹介したとおり、最初の半導体はゲルマニウムから出発してます。しかしその後、半導体の主流はシリコンとなりました。今では化合物半導体と呼ばれるものもありますが、それでも主流はシリコンです。
シリコンの話に入る前に結晶のお話をしましょう。皆さんご存知のとおり、物質には三態と呼ばれる状態があって、それは固体、液体、気体です。
そして、結晶とは物質が固体になるときに生成される均一な側面を持つ物質の小さいものです。つまり同じ形(原子や分子の配列)をしているものが規則正しく並んでいる固体の小さなものと考えていいでしょう。
結晶には多結晶と単結晶があります。多結晶とは、結晶が多いということですが、結晶の向きがバラバラで結晶間には界面(結晶粒界)というものが存在してしまいます。この状態では固体の性質に様々な影響を受け、本来の姿ではなくなってしまいます。
一方単結晶は、結晶の向きが同じであり、物質そのものの特性がそのまま出ます。半導体として使用するためにはシリコンを単結晶の状態にします。
また、シリコンはそのままでは使えず、高純度化する必要があります。(高純度とは混じりけのない、という事です。)まずは高純度化をします。どれくらい高純度化されるかというとシリコン純度99.999999999%です。
高純度化された多結晶シリコンから、単結晶を作ります。この状態はインゴット(塊)と呼ばれるものですので、これをスライス状にカットしていきます。
こうして高純度化されたスライス状のものをシリコンウェハーといいます。ウェハーとは、お菓子のウェハースと同じ意味です。そしてこのシリコンウェハーにはいくつかのサイズがあります。
シリコンウェハーは一番最初のサイズは直径0.75インチ(約20mm)からスタートしています。その後、どんどんと大きくなっていき、今では300mmが大きなシェアを占めています。それよりも大きい450mmも研究されています。
サイズの呼び名ですが、当初から、8インチまでは半導体がアメリカから出てきたためか、インチ表記とメートル法表記が混在する(主としては、インチ表示が多かった)したが、300mmから世界的にメートル表示が標準になっています。
では、なぜシリコンウェハーの口径は大きくなってきたのでしょうか。答えは単純です。一枚のウェハーからいくつの半導体チップがとれるか、ということです。当然面積が大きい方がとれますよね。ウェハー一枚当たりとれるチップの数が多ければ、半導体の価格も下げられる、ということです。つまり、「大きいほどいい」わけです。
シリコンウェハーはどうやって作られる?
シリコンウェハーは先に紹介した通りの円盤です。ただし、最初から円盤だったわけではなく、円柱のような塊をスライスして円盤状にしています。
このカット(スライスカット)するために重要なのはせっかく高純度化したシリコンに異物をつけないことです。高純度化されたシリコンは汚染されやすく、素手でさわるとか、金属に触れるとか、一切NGです。
このため、カットするときに使うものは、ダイヤモンドやサファイア、SICといったとても固くて、汚染されていないものが使用されます。汚さない、といっても限度があります。カットされた後には洗浄を行います。洗浄もまた、汚染の原因となることがあるのでここにも多くの高品質のウェハーを作るためのノウハウがあります。
そしてカットされてできたシリコンウェハーは品質の高さはもちろんですが、均一性が求められます。品質として大事なのは、汚染されていないこと(特に重金属)、平坦度(均一に平であること)、パーティクル(小さなゴミ)が付着してないことなどがあります。
こう考えると、シリコンウェハーは大きくなればなるほど作るのが難しい、というのがご理解いただけると思います。
生まれたばかりの人は無垢で穢れがない、ですが、ウェハーもまたそのようになるようにできていくのですね。
まとめ
(あら、ずいぶん早いわね~)
(セミオ、席を変わる)
ママは世の中の進歩は小さくなっていくことに価値がある、と熱心に話をしました。ミチコも、それを熱心に聞いていました。ママは大きいと不便なことも多くて大変だとも説明しました。
大きくてももちろん、いいことはあるけど、肩は凝るし、走るのには邪魔になるし、場合によっては猫背になってスタイルにだって影響がある、とも言ってお話しました。
半導体の素ともいえるシリコンウェハーですが、どんどん大口径化して、コストを下げようとしてます。
皆さんが持っているスマートフォンやタブレット、パソコンなど高性能化してさらに価格が安くなっているのには、こういった背景もあるのです。ミチコちゃんには言えませんが、シリコンウェハーに関しては大きいことこそ、いいことといえるのです。
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[…] シリコンウェハーができるまでを以前簡単にですが、紹介しました。(参照:半導体の素) […]