パターン化してるといわれ、ショックを受けたセミオ君ですが、どうもそれどころではない人がいるようです。いつもは仲があまりよくないミツオ君でした。さすがの落ち込みようにセミオ君ちょっと声をかけてみます。
ミツオ君の表情がかたまりました。図星だったようです。
今更あてずっぽうとも言えず、セミオ君は
と言いながらもまた、ため息を吐くミツオ君です。
ミツオ君はあまり乗り気ではなかったようですが、家に帰っても仕方ないと思ったのか、結局二人でクラブセミコンへ向かったのでした。
ウェハー洗浄工程
「カラン、コロン」
今日のママは機嫌がいいようです。
セミオ君は、ミチコちゃんとそうなる前のいきさつと自分が思いつく可能性をママに話しました。
それを聞いていたママが突然、
さて、ここから紹介するのは、半導体の製造にとって特にキモとなる部分かもしれません。というのは、何かウェハーに加工(例えば、エピタキシャル成長、イオン注入、熱拡散など)及ぼしたときに必ず通る道だからです。
一般に、ウェハーに加工を施す場合は、まずこのウェハー洗浄をしてから行います。
ですから、装置の側面から考えると、例えば、’エピタキシャルウェハー用洗浄機’のような個別な装置をもっているわけではありません。つまり他の工程と違って多台数を持っていない場合が多いので、故障すると代わりがない、という場合が考えられます。
故障した場合は他の工程も合わせて止めなければならない、といったことが起きてしまいます。
また、仮に、前の工程でのウェハー加工がすべて順調で問題がなかったとしても、この工程で何かあればすべてがダメになることがあります
つまり、ここで何かあると、すべておしまいといった恐ろしい工程でもあります。それがウェハーの洗浄の工程です。
ウェハーの洗浄とは
ウェハーを洗うことですが、洗濯機のように洗剤をいれたり、水流を回転させて洗うわけではありません。
洗浄の方法はドライ洗浄とよばれる液体を使用しない方法とウェット洗浄と呼ばれる液体を使用する方法とがあります。ここでは、ウェット洗浄について紹介していきます。
ウェハーの洗浄とは、もちろん、汚れを取るという要素もありますが、ズバリ不純物を除去する目的で行われます。今まで紹介してきた工程には必ずと言っていいほどあらゆる不純物汚染の可能性があります。
半導体を製造する工場はほぼクリーンルームという清浄度の高い部屋でできていますが、ウェハーを完全に汚染から守るのは無理です。必ず何らかのゴミや汚染物質が存在します。とはいうものの、そこを軽んじているわけではありません。
一例ですが、クリーンルームの清浄度を表す指標に「クラス+数字」(米国連邦規格)というのがあります。
その場合、「クラス1」というと一立方フィート(約30cm四方)内の空間に0.5μmのゴミが一個まで、という規格です。
ちなみに1μmが1000分の1㎜ですから、さらにその半分のゴミが一個まで、とういうことです。ちょっと想像もつきませんね。とにかくゴミがない環境で半導体は作られるのです。にも拘わらず、必ずデバイスに影響を与える汚染源が存在します。
特に最近の高性能化のもとでは、以前と同じスペックでは通用しない段階に入っています。
以前も紹介しましたが、半導体の製造は、小ささへの挑戦でもあります。そしてその象徴ともいえるのが「デザインルール」と呼ばれるものです。
集積回路を拡大して覗いてみると、素子と素子をつなぐ配線が見えます。この線幅を小さくしていけば、同じ面積でも多くのトランジスタなどの素子を埋め込むことができます。そしてこの線幅(最小加工線幅ともいいます)をデザインルールといいます。
そして一般に除去されるべき汚染はデザインルールの数分の一から十分の一ともいわれています。
これはパーティクルなどの測定装置の限界を超えており、クリーンルームの状態では必ずしも品質に満足を与えることができているのか、不明ということもあります。
ですから洗浄の工程は必須で、かつデリケート、半導体の技術者たちの中では最重要と考える人もいるくらいです。
洗浄のノウハウ
それゆえなのか、洗浄工程のノウハウは他の工程とちがい、かなり製造メーカーによって違っています。他の装置(例えば、酸化炉、イオン注入機、エピタキシャル炉など)は専門のメーカーが製造・販売を行いますが、ウェハーを洗浄するための装置は自作するメーカーが存在します。
かつては、エピタキシャル炉を自作しようとしたシリコンウェハーメーカーも存在しましたが、うまくいかずに挫折した、という話もきいたことがあります。挫折した理由はコストの問題と聞いています。
上記で紹介したエピタキシャル炉に限らず、半導体製造装置の作成はとてもコストがかかり専門化して作った方が結局安上がりだ、ということです。(とは言っても相当高額には違いありませんが・・・)
もちろん、ウェハー洗浄装置を作っているメーカーも存在しますが、それでも内作をするウェハーメーカーが存在するということは、それだけ秘密の部分があり、既製品では難しい使い方の方が、重要と考えるメーカーがいる、ということなのだと思います。
洗浄装置は、ウェハーを洗浄するために使う薬液を決め、それに耐えられ、かつウェハーを汚染させない部材を使うことや、ウェハーを運ぶためのキャリアがやはりウェハーに対し影響をあたえないこと、などがとても重要であるからです。
また、ウェハー洗浄は、工程の前後や最終工程でも必要になります。その都度使用する薬液は違ってきますから、工程が変わるたびに対応する洗浄装置を用意するわけにもいきません。
製造全体の工程を俯瞰して、最も効率がよく、装置台数が少なくて済むような洗浄装置が必要になる、ということになり、既製品では満足できない、ということになります。
また、それでも専門メーカーに特注で依頼するケースも考えられますが、その場合、どうしても秘密の漏洩に気を遣う必要があり、(もちろん機密保持契約は結びますが)そういったことはできる限り、防ぎたいという思惑も絡んでくるのです。
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