さて、エピタキシャルの品質についての最後です。前回の最後でママはセミオ君とのデートの約束をしました。デートといっても食事だけでしょうが。
それでもセミオ君にとっては大きな喜びだったに違いありません。でも、そんなセミオ君の思ったとおりデートになるのか、少し心配ですが。
クラブセミコンは水曜日が定休日なので、デートは水曜日にするようです。セミオ君は水曜日は仕事なので、ママに合わせて有給休暇をとりました。
待ち合わせ場所にて
セミオ君は回りを見ては、時計を確認する、まるで首振り人形のようです。
やっとママの姿が見えてきました。待ち合わせの時間からもすでに一時間が過ぎようとしています。
今日のママは店の服装と違って、大人の女がまとう黒のワンピースです。セミオ君は思わずドキドキしてしましました。
二人はイタリアンのレストランに入りました。そこで
なにかと見てみると
セミオ君はしぶしぶ首をたてにふりました。
エピタキシャルの品質
パターン変形
さて、今回はパターン変形についてまず紹介していきます
1.結晶欠陥 |
2.不純物汚染(金属汚染) |
3.オートドーピング |
4.パターン変形 |
5.その他 |
一般に「パターン」という言葉を聞いてどんなことを連想しますか?パターンとは日本語で「型」とか「類型」あるいは「図形」なんて意味もあるようです。
しかし、今から紹介する「パターン変形」のパターンは少し意味合いが違います。
エピタキシャル成長をするウェハーはプライムウェハーなのですが、エピタキシャル成長を行う前に加工することがあります。それは、ウェハーに対して埋め込み拡散層を形成することです。
この埋め込み拡散層についての細かい紹介は次回以降に譲るとして、写真技術などによって、回路のパターンを焼きつけられたウェハーにエピタキシャル成長をする際に、おきてしまう、品質異常を「パターン変形」と呼んでいます。
これはどのように確認するかというと、ウェハーの表面から、100~数100nmの段差をつけてエピタキシャル工程の目印にして、段差のあるウェハーにエピタキシャル成長を行うと下地からずれたり、ダレと呼んでいる変形を生じることがあります。
これはウェハーの面方位、成長速度、温度、圧力、原料ガス(主にシリコン系ガス)によってその度合いが変わってきます。
例えば、原料ガスにトリクロロシランを使用していた場合において、パターンにダレが生じたときには、成長温度が低いのが原因と考えられます。
また、ズレを生じる場合は、温度が高いか、低いかで、成長速度が不適切なケースなどが見られます。また、原料ガスの違いとして、’CL’の割合が多い場合、ダレやズレが発生する確率が上がります。
これらはテストとしてエピタキシャル成長を行って、顕微鏡でパターンを確認してから本格的にエピタキシャル成長を行うようにしています。
その他
主だったエピタキシャルの品質について紹介してきましたが、もちろんこれらだけではありません。
その他にも多くの不良があります。
割れ
ウェハーの衝撃を与えてしまって割れることもありますが、エピタキシャル成長膜の厚みを大きくした場合にも生じます。通常エピタキシャルの厚みはおよそ5~30ミクロン程度ですが、お客様の要望で100ミクロン以上のエピタキシャル膜を作成することがあります。
この場合、サセプタ(参照:半導体 エピタキシャル成長装置~シリコンウェハーの作り方)からウェハーを取り出した途端に割れることがあります。エピタキシャル結晶を厚く作るにはこの割れの他にも問題があります。
スリップ
スリップとは英語で、滑るという意味です。製造現場では、SLと呼ぶこともあります。現象のイメージとしては以下のようになります。
サセプタの上にシリコンウェハーが乗っているのですが、片側からの加熱だけなので、シリコンウェハーの端面が反ってしまう、ということが起きます。
そうすると、端面にはサセプタからの距離が生じてしまうので、中心部とは温度の開きができることになります。結果出来上がるウェハーには多数の転移の束(スリップバンド)ができてしまいます。これをスリップと呼んでいます。
スリップはエピタキシャル結晶が、プライムウェハーの結晶の軸とずれた(転移)状態のことです。
これは近年のシリコンウェハーの大口径化にとってとても不利になると考えられてきました。しかし、上図のようにウェハーを上から温めるエピタキシャル装置ではなく、上下で温めるの出現によって、かなり緩和されています。
大口径(200㎜以上)のエピタキシャル製造装置は上下から赤外線ランプで温めるタイプです。しかし、それでも、シリコンウェハーを炉内に挿入する際に、どうしてもサセプタの方が温度が高くなるので、ウェハーの挿入時の搬送方法に工夫が必要になっています。
平坦度
半導体のコスト削減のためには、シリコンウェハーの大口径化が必須です。以前紹介したように、シリコンウェハーは100㎜、125㎜、150㎜と大きくなってきました。
今では200㎜、そして主流は300㎜になってきています。
そこで大きくクローズアップされてきたのが、これから紹介する平坦度という指標です。大口径化には、先ほど紹介したスリップも問題になりますが、むしろ平坦度の制御が難しくなっています。
ここでの平坦度は露光工程と呼ばれる半導体製造装置、ステッパーに対応したものです。(この工程は後日紹介します)
エピタキシャルウェハーではエッジクラウン、裏面ノジュールといった問題が劣化の原因になります。
エッジクラウン
エッジクラウンとは、ウェハー端部におけるクラウンのことです。クラウンとはエピタキシャル成長時に主表面よりも結晶の高さが厚くなる現象のことです。ウェハーの端部は曲面であるため、様々な面方位で結晶の成長が起きます。(参照:半導体 エピタキシャル結晶成長とは~シリコンウェハーの作り方)
そして、面方位の違い、面取り面の形状や、結晶成長温度により、エピタキシャル結晶の厚みが大きく変わってきてしまうのです。
これらを制御するためにエピタキシャル膜厚の均一性をあげて、急激な厚みの変化のあるところにも対応していく必要があります。
ノジュール
シリコンウェハーの裏面や面取り部に発生したポリシリコンの異常な結晶成長した粒をノジュールと呼んでいます。
裏面についたものは突起として平坦度の劣化を引き起こし、面取り部のものは、脱落してパーティクルの原因になります。
発生原因としては、オートドープ(参照:半導体 エピタキシャルの品質 その2)抑制用の裏面の酸化膜のキズが考えられます。防止策としては、シリコンウェハー裏面へのガス回り込みの低減が重要になります。
これらのことを考えると、平坦度の劣化はエピタキシャル結晶膜厚の厚いものほど問題となりやすくなります。
セミオ君の声が届いていないのか、ママはノートを見ながら
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